デザイン思考はユーザーイノベーションとは異なる。
ユーザーイノベーションの考え方は、「わざわざ企業がニーズを拾い上げてアイディアを考えなくても、ユーザーには少ないながらもアイディアの保有者が存在するので直接ユーザーにアイディアを尋ねればよい」というもの。したがて、
・優れたアイディアを持つところからそれは引き出すべき(リードユーザー法)
・特定のコミュニティ(ユーザー起動法)
・不特定ユーザーからアイディアを募ればよい(クラウドソーシング)
などがあるとされたきた。
他方、デザイン思考は「アイディアの源泉はユーザーの頭の中の未意識領域にあり、明確な答えを有しておらず、ヒントのみ有する」という前提に立っている。
したがってこちらが観察して、ヒントや答えをこちらが導き出す必要がある。しかもそれらは個々に違いがある。それら言語化できないニーズをどうやって浮かび上がらせるのかがポイントになる。
このプロセスは、スタンフォード d.school の「デザイン思考の5段階」などとして示されている。
1. 共感/理解
2. 定義・明確化
3. アイディア造り
4. プロトタイプ
5. テスト
「観察を通じて」ユーザーを理解することに、デザイン思考の特徴があるのだ。
このようにアイディアを生み出した経験はありませんか?
アイディアは既存のアイディアの組み合わせだ。事物の関連性からアイディアを見つけ出すことができる。
アイディア生み出す具体的方法は、
まず、資料集める。次にそれら資料を組み合わせ、その関係性を探る。しばらくは頭の中がごっちゃになり、曖昧な状態が続くことになる。
その手詰まり状態から離れ、それらを一旦心から放棄してしまう。劇や音楽、詩など、自分の想像力や感情を刺激するものに心を移す。未意識の創造過程を刺激するのだ。
でもどこからもアイディアはあらわれてこない。それは、入浴時や朝目が覚めていない時、散歩の途中など、最も到来を期待していない時に訪れる。
そうやて降りてきたアイディアは断片であることが多い。アイディアの全体像を見つけ、それを分かるようしなかればならない。この一瞬逃してしまうとアイディアの破片は陽の目を見ずに失われることになる。アイディアを現実に連れ出すことが必要なのだ。
次に現実の過酷な条件やせちがらさに適合させるためアイディアにたくさんの手を加える。また、理解のある人から批判を受けるなどのしつこさも必要だとなる。
良いアイディアはそれを見る人々を刺激するので、まわりの人が手を貸してくれる。それによって自分が見落としていた種々のアイディアの可能性が明かるみに出てくる。良いアイディアは自分で成長する性質を持っているのだ。
以上は、
元米国広告代理店役員ジェームス・W・ヤング『アイディアのつくり方』(翻訳昭和36年初版/米国初版1940年)の本の要約です。あまりにうす~い本なのでびっくりですが、大量消費されるノウハウ本の中でここまで長く残る本は稀でしょう。