中原淳(2021)『中小企業の人材開発』 東京大学出版会 では、従業員300名以下企業の管理職の実態が次のよう紹介されている。
・女性管理者は1割未満
・平均年齢は42歳
・部下数の平均は10名
・個人目標を有するプレイングマネジャーは全体の83%
・個人目標の達成に多くの時間をかけてしまう管理者は、「会社への貢献度」「管理者としての能力向上」においてそうでない人に比べて低くなる
・「重大クレームの対処解決」「管理業務の代行」「協力会社とのトラブル解決」「全社を巻き込んだり、社長直下のプロジェクト」など、管理者になる前から周囲よりも責任の重い仕事を任されてきた
・2割の人は管理職研修の受講機会がない
・会社指示による社外勉強会へ参加は、年に1回以上が8割。ただし、参加後に「社内メンバーと共有する」「自分の仕事に適応する」人は半数程度
・他方、自発的に社外勉強会に参加した場合は、「業務に適用する」人が8割、「メンバーと共有は」4割
・経営者との会話頻度は「月に1、2回」が8割であり、必要を認識している経営者自身の自社の管理者への教育へのコミットメントは低い
大学卒業後、私の入社した会社は㈱リクルート人材センターという人材斡旋を行うために㈱リクルートから独立してつくられた会社だ。当時は従業員250名程度の中小企業であった。私はその後従業員3000人の㈱リクルートへ出向・転籍をしたが、組織の印象はだいぶ異なっていた。言葉に表しにくいこの感覚の違いが、大手企業を中心とする人材開発施策の言説が中小企業にフィットしない理由の一つだろう。それらの事実に向き合い、深く考えることをしていなかった。
何かを行い、何かを達成したい時に、私たちは組織をつくる、組織を活用する。組織に頼る。
一人のひとの能力の限界を超えるための手段として、組織をとらえられる。しかし、人はそのような組織に依存してしまうことがある。そもそも生物が集団で行動することには、そのようなことが起こることが知られている。助け合うことが自然なのだ。
集まった人の総和を超える以上のことが組織では生まれなければならない。そうでなければ組織でやる必要が無い。もちろん、同じ目的をもった人たちが集まっていることが前提だ。
経営学の最初の問いかけは、効果的な分業を考えることである。
その後、そのデメリットを補完する調整方法を検討する。階層による調整が、現在でも有力な調整手段である。
組織の構造づくり(イメージは「組織図」)で分業が実現された後に、しくみやルール(イメージは「マニュアル」や「ルーチン」)などでその活動の調整方法が示されるのだ。