「BRHジャーナル」カテゴリーアーカイブ

分業して調整

何かを行い、何かを達成したい時に、私たちは組織をつくる、組織を活用する。組織に頼る。

一人のひとの能力の限界を超えるための手段として、組織をとらえられる。しかし、人はそのような組織に依存してしまうことがある。そもそも生物が集団で行動することには、そのようなことが起こることが知られている。助け合うことが自然なのだ。

集まった人の総和を超える以上のことが組織では生まれなければならない。そうでなければ組織でやる必要が無い。もちろん、同じ目的をもった人たちが集まっていることが前提だ。

経営学の最初の問いかけは、効果的な分業を考えることである。

その後、そのデメリットを補完する調整方法を検討する。階層による調整が、現在でも有力な調整手段である。

組織の構造づくり(イメージは「組織図」)で分業が実現された後に、しくみやルール(イメージは「マニュアル」や「ルーチン」)などでその活動の調整方法が示されるのだ。

 

リーダーシップの議論経緯

狭義のリーダーシップ論変遷

管理者は、仕事の管理だけではなく時代の求める変化に立ち向かい、人々を率いるリーダーシップが必要だ。
リーダーシップを実現するには「共通の資質や特性がその人に求められる」という考え方と「特定の行動をすることでそれは実現できる」の2つの考え方が示されていた。
その後、リーダーシップは共通の資質や特定の行動ではなく、状況に対応した適切な方法があるとの議論が展開された。
しかしそれ以後も、相手と自分の関係や交流を考慮した考え方や、自分の感情を制御し相手の感情を読み取ることが重要である、フォロワーに奉仕するリーダーが求められるなど、新しい考え方が次々に提示されている。さて、現在、これから、注目されているリーダーシップ論は何でしょうか?

参考:高橋伸夫(2021)『コア・テキスト経営学キーワード』新世社

なぜ、組織で仕事をするのか?

「なぜ、組織で仕事をするの?」

自力で稼ぐことができれば、わざわざ組織で仕事をしなくてもよい。

それができない場合に組織(企業)で働くのだ。どちらが良いということではない。

 

「では、個人と組織の違いは何だろう?」

個人は、全知全能ではない。

個人ひとりの力で生きていく自給自足は不可能だ。

 

「個人が組織で働くメリットはどこにあるの?」

・組織で他人と協働することで、個人ひとりの能力(自分できること)の限界を超えられる。

・分業、専門化の進んだ組織は、個人ひとりですべてをやるよりも能率が良い。

これらを享受できる可能性があるのだ。

 

現在、日本国では参加する組織(企業)を個人で選ぶことができる。

たまには振り返ってみることも必要だ。

 

稟議制度は、ありますか?

以下、浅井論文*1)から引用

稟議制度とは、「業務の執行について経営上重要な事項が,組織体の下部(下層から中間の管理層)によって立案され,関係者を経て上部機関によって決裁される制度であり,文書(稟議書,起案書)の回覧によって各関係者の承認,決裁が行われる制度」とされる。

他方、近代組織論においては,意思決定すべき問題の領域を細分化し,それぞれの領域の専門家に限られた範囲の意思決定問題を割り当てることが、組織における意思決定の階層的な分業である(Simon1997)。

しかし、日本の「稟議制度」は、意思決定の範囲ではなく,意思決定の 4 つの段階,①課題の設定,②選択肢の探索,③選択肢の選択,④選択結果の再検討(Simon 1977)を階層間で分業する構造となっている。 そこで、浅井は2つの仮説を立てている。

仮説1 「稟議制度」は参加による上方への情報伝達手段であるとともに、意思決定プロセスの分業構造により、階層が低い職員に現有する職務能力を超える経験を与える OJT の役割を果たしているという稟議制度の人材育成の機能を果たしている。

仮説2 「稟議制度」による人材育成は、長期雇用や職務権限の規定、評価制度といった人事諸制度との整合性により一つのシステムとして機能している

*1)浅井 希和子(2017)「従業員の組織の意思決定への参加がマネジメント人材の育成に与える影響 : 稟議制度の機能についての一考察 (統一論題 グローバル化と労使関係)」 日本労務学会全国大会研究報告集 / 日本労務学会 編 47:2017 p.222-229

昭和の頃、日本型意思決定制度のネガティブな特徴として「稟議制度」は大いに議論されていたようだ。でも最近は話題になっていなかった。面白い仮説だ。しかし、稟議制度は現存しているのだろうか?変容してるとしたらそれは大変興味深い。

 

「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」(JILPT)

人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」結果が発表された。「従業員100名未満の企業において、この1年間でOFF-JT研修を実施した企業は、全体の3分の1程度である」とのこと。

環境変化にスピーディーに対応するには、内部の資源に頼らず、外部の資源を活用することが得策である。内部資源が不足しがちな中小企業において、その手段の一つであるOFF-JTの利用率がこの程度でよいのだろうか。

なぜだろう。OFF-JTの有効性が低いからだろうか?OFF-JTの内容がだめなのかもしれない。しかし、調査結果を見ると「OFF-JTにそれなりに効果がある」と企業は認めている。であるならば、実施する予算や時間の捻出が難しいのか・・・スッキリしない。

現下の経営環境では、未来を切り開く情報や技術を内部の努力だけで獲得することは難しいのではないだろうか。

もちろん、外部資源を活用し内部に導入する方法は、OFF-JTや自己啓発などに限ることなく、M&Aや業務委託などの手段もある。周辺業務ならそのような手段もあるが、一番大切な自社のコア部分に関してはそうもいかないのではないか。OJTにあっても「指導する人がいない」とのことで実施に課題があるとの結果が出ている。これでは内部を磨き上げるための方策に手詰まってしまう。

このような調査結果の傾向は、この30年は変わっていないように思う。

そもそもOJT,OFF-JT、自己啓発というくくり方自体が、実態に合っていないのではないだろうか。現実を見定める視点の再考が求められる。